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回路表面にチリ一つ残さないために

半導体LSIは、現在ではおおよそ1000の工程で製造されています。ここで課題となっているのは、それぞれの工程ごとに回路を刻んだ削りかすや薬液の残りなど、さまざまな異物がシリコンウェハの表面に付着すること。この異物が表面に残っていると回路に不具合が起きるので、どれだけきれいに取り去れるかがLSI製造の歩留まりを高めるキーとなっています。私たち、半導体プロセス材料チームはその異物を取り去る薬液、「洗浄剤」を開発しています。

シリコンウェハの表面を顕微鏡で検査。微細なほこりも残せない。

積み上げてきた基礎研究と市場調査が武器

洗浄剤の開発は、主に顧客からの要望を受け、それに応える形で進めていきます。製造工程よって付着する異物が異なるので、薬液もその異物に合わせて、数多く用意する必要があります。その開発においては、本来、どのような異物が、どうやって付着するのかを知ることが欠かせないのですが、LSI製造プロセスはメーカー独自のノウハウを含むため、情報が公開されることはまれです。そこで、半導体装置メーカーや部材メーカーとつながりを作ることで情報を収集したり、社内のマーケティング部門と連携しながら業界の動向を探り、製造工程の仮説を立てています。この仮説に基づき、半導体ウェハに付着する異物を推測して除去しなければいけない異物を明確にし、その除去に有効な薬液を開発することが我々のタスクです。
また、半導体は高性能化が宿命付けられているだけに、使われる材料や工程は、頻繁に変化していきます。それに伴って、洗浄剤も新しい機能が求められるので、変化のスピードに対応できるアイデアの創出が常に求められています。短期間で要望にあった洗浄剤を開発するため、日々の実験データの蓄積は欠かせませんし、開発した洗浄剤の性能を評価する方法を日々試行錯誤する中で、開発メンバーはより高度なスキルを持つことができました。その結果、最先端の半導体企業に引けを取らない精鋭チームになれたのではないかと実感しています。さらに、平均して月に一度は顧客にプレゼンテーションする機会があり、プレゼンの技術も相当鍛えられましたね。

「洗浄剤の開発でLSIの高性能化に貢献していきたいですね。」

水で洗い流すよりもやさしい洗浄剤を開発

2014年には新しいコンセプトの製品として中性の洗浄剤を上市しました。これまで主流だった酸性やアルカリ性の薬液は洗浄力が高い反面、腐食性が高く、配線パターンが数十ナノメートル以下にまで微細化した最先端のLSIでは、配線をえぐってしまうことが問題になっていました。そのため、開発チームでは、腐食性の低い中性の洗浄剤の開発を他社に先駆けて着手。十分な洗浄効果を持ちながら、水よりも腐食性の低い洗浄剤を開発し、LSIの微細化に一役買っています。
LSIの微細化は限界が近づきつつあると言われて久しいですが、その都度新たな技術が生まれ、これまでも進歩してきました。現在もさまざまな試みが行われていますが、そのトレンドをいち早く捉え、先回りして問題を解決できるような洗浄剤を開発することを私たちの使命と捉え、日々研究に取り組んでいます。

中性洗浄剤での洗浄例(左)。従来品(右)に比べて、表面の微粒子などを効果的に除去できる。